長野県は2025年10月、岡谷市を中心に県内117団体・約2,000人が参加する総合防災訓練を実施した。 背景には、長雨や台風、そして地震が同時に発生する「複合災害」への警戒がある。
訓練の概要
想定は「秋雨前線による長雨で地盤が緩み、その直後に震度7の地震が岡谷市を直撃」。 県内の中小河川では増水、斜面崩壊、道路寸断、停電や断水、通信障害、諏訪湖での漂流者発生など、 同時多発的な被害を前提に行われた。
訓練には県・市町村・自衛隊・消防・警察・企業・地域住民が参加。
倒壊家屋からの人命救助、諏訪湖での漂流者救助、ドローンによる被害状況確認などが実施された。
(出典:
FNNプライムオンライン、
長野県防災ページ)
長野県が抱える災害リスク
長野県は日本アルプスを抱えた山岳地帯で、急傾斜地が多く、地盤の弱い地域が点在する。 さらに「糸魚川‐静岡構造線」など活断層が県内を横断し、地震リスクも高い。 大雨で地盤が緩んだ状態で地震が起きれば、土砂崩れや家屋倒壊の危険が増す。
1985年には長野市で地附山地すべり災害が発生し、26人が死亡。
長雨による地下水上昇が原因とされ、県では現在も地滑り・斜面崩壊の警戒区域を指定している。
(出典:
NBS長野放送)
訓練が示す「今後の備え」
今回の訓練は「雨が止んだあとに起きる地震」を想定しており、 “安心できる時間帯こそ危険”という現実的な視点に立っている。 近年は台風・豪雨・地震が連鎖的に発生する複合災害が増えており、単一災害を想定した防災では限界がある。
停電・断水・通信障害が同時に発生する可能性を踏まえ、 地域住民が自ら行動できる「自助」「共助」の強化が求められている。
3つの注目ポイント
- 斜面危険度の可視化: 急傾斜地の多い県内では、雨と地震の組み合わせによる土砂災害リスクが最も高い。
- インフラ被害の連鎖: 停電・断水・通信障害・道路寸断が同時に起こる「多重被害」への備えが必要。
- 官民一体の行動訓練: 行政・企業・地域住民が参加する実戦的な訓練を継続する意義がある。
まとめ
山と断層を抱える長野県では、「雨・地震・斜面崩壊」が同時発生する最悪のシナリオを現実的に想定する必要がある。
今回の訓練は、その備えが“机上”から“現場実践”に移行していることを示すものだ。
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