屋根の葺き替え|費用相場・工期・メリットデメリット・長期コスト

屋根工事の中でもっとも根本的な解決策が「葺き替え」です。既存の屋根材と下地をすべて撤去し、新しい下地材・防水シート・屋根材に刷新します。費用や工期は大きくなりますが、耐久性・安心感・資産価値は最大。この記事では相場の目安、屋根材ごとの特徴、工法の流れ、メリットとデメリット、長期コスト比較、失敗を防ぐ見積チェックポイントまでを徹底解説します。

葺き替えの費用相場と工期

屋根材費用相場工期特徴
スレート → スレート100万〜180万円7〜12日普及材で費用抑制。耐用25〜30年
スレート → 金属(ガルバ等)120万〜200万円7〜12日軽量化・耐久30〜40年
瓦 → 軽量金属瓦180万〜250万円10〜14日耐震性向上。外観の意匠も保てる
瓦 → 瓦200万〜300万円12〜15日重量大。耐久50年以上だが地震対策要

※足場費用(10〜25万円前後)は別途。外壁塗装と同時なら共用で節約可能。

屋根材の選び方(耐用年数・重量・メンテ性)

屋根材耐用年数重量(目安)メンテ頻度向いているケース
スレート25〜30年約20kg/㎡10〜15年で塗装費用を抑えて標準的に更新したい
金属(SGL・ガルバ)30〜40年約5〜7kg/㎡塗装間隔は長め軽量化・耐震性UP・沿岸/降雪地の防錆
軽量金属瓦40年〜約6〜8kg/㎡低頻度瓦風の外観を保ちつつ軽量化したい
陶器瓦50年〜約40〜60kg/㎡低頻度(割れ差替え中心)意匠重視・長期耐久を最優先

金属系はSGL(次世代ガルバ)など高耐食材を選ぶと、沿岸や積雪地でも安心。断熱一体型パネルや棟換気の採用で、小屋裏の温度・湿気も改善できます。

葺き替え工事の流れ

  1. 既存屋根材・下葺き材・野地板を撤去
  2. 新規野地板(12mm以上合板)を張替え
  3. 防水シート(改質アスファルトルーフィング等)を施工
  4. 新しい屋根材を葺き(材質により工法差あり)
  5. 役物(棟・谷・雨押え・雪止め)を取り付け
  6. 清掃・最終確認・施工写真納品・保証書発行

葺き替えのメリット

  • 根本解決:下地まで刷新するため、雨漏り・腐食を一掃できる
  • 耐震性UP:瓦→金属葺き替えで重量が半減し、地震時のリスク軽減
  • 断熱・遮音性改善:高性能下葺き材や断熱パネルを同時導入可能
  • 長期安心:耐用年数30〜50年。次世代まで持つ場合も
  • 資産価値向上:築古でも屋根が新しいと売却査定が有利に

葺き替えのデメリット

  • 費用負担が最大。100万〜250万円以上かかる
  • 工期が1〜2週間と長め。天候順延で延びる可能性
  • 工事中は騒音・振動が発生。生活影響が大きい
  • 廃材処分費が発生。石綿スレートは特別処理費用も追加

長期コスト比較:カバー vs 葺き替え

築30年スレートの例。
カバー工法:100万円・耐用30年。既存下地に依存するため、腐朽が残るリスク。
葺き替え:150万円・耐用40年。下地から刷新で再発リスク最小。
10〜20年スパンの総コストで見ると差は縮まりますが、根治性・耐震性を考えると葺き替えが優位です。

失敗事例と注意点

  • 石綿スレート撤去で追加費用が発生 → 見積に石綿処分費を明記
  • 野地板を張り増しせず施工 → 耐久不足。必ず新規合板を施工
  • 保証が口頭のみ → 書面で施工保証+製品保証を確認
  • 工期延長時の追加費用 → 契約書に「天候順延は施主負担なし」と明記

近隣対応・安全管理

  • 着工前に近隣挨拶(工期/作業時間/騒音の説明)。
  • 搬入経路・仮設足場の安全動線、仮設トイレ設置の有無。
  • 都心部や狭小道路は道路使用許可が必要な場合あり。

見積書のチェックポイント

  • 撤去・処分費の明細(石綿含有の有無)
  • 野地板の仕様(厚み・材質・数量)
  • 防水シートの製品名・重ね幅・立上げ処理
  • 屋根材メーカー・型番・保証年数
  • 役物(棟・谷・雨押え・雪止め)の仕様と数量
  • 材料費と施工費の区分。一式表記は回避
  • 保証内容(年数・範囲・免責)を別紙で
  • 工程表と天候順延時の取り決め
  • 施工写真・保証書の納品条件

仕様で差が出る重要ポイント(チェックリスト)

  • 野地板:張り増しではなく張り替え(12mm以上合板)がベター。腐朽は撤去。
  • ルーフィング:製品名と重ね幅・立上げを明記。改質アスファルトの高耐久品推奨。
  • 役物納まり:棟/谷/壁際/雨押えの通気と水返し設計。逆流・結露を防ぐ要。
  • 通気・断熱:野地と屋根材の通気層、棟換気・軒先換気の有無で性能が変わる。
  • 金属厚み・塗膜:板厚(t0.35〜0.5等)と遮熱・高耐候塗膜のグレード確認。
  • 雪止め:必要地域は割付・固定方法を仕様化。不必要なら外して軽量化も。

助成金・火災保険の扱い

自治体によっては葺き替えが耐震・省エネ補助の対象。
火災保険は自然災害起因(台風・雪・雹等)で屋根が損傷した場合に適用可能。
いずれも着工前申請が原則で、事後申請は認められません。

支払い・減税・補助の可能性

  • 支払い条件:着工金/中間金/完工金の比率・期日を契約書に明記。
  • リフォームローン:金利・手数料・繰上返済の可否を比較。
  • 節税・補助:省エネ/耐震枠や自治体制度の対象となる場合あり(地域ページ参照)。

石綿(アスベスト)含有スレートの扱い

2006年頃以前のスレートは石綿含有の可能性があります。含有の有無で撤去・処分工程費用が変わるため、着工前に確認が必須です。

  1. 製品名・製造年代の確認(図面/シール/目視)
  2. 必要に応じて簡易検査(採取→分析)
  3. 含有時は指定手順で撤去・梱包・運搬・最終処分、マニフェストを発行

見積書には「石綿含有時の処分費」「分析費」「保護具・養生費」を別明細で計上。後出し費用を防げます。

施工後の点検・メンテ計画

  1. 引き渡し時:施工写真と保証書を受領。役物の締結確認。
  2. 1年点検:棟板金・雪止め・塗膜の初期不具合をチェック。
  3. 5〜10年:シーリング・塗膜の劣化点検。必要に応じて部分補修。

FAQ

葺き替えとカバー、どちらが良い?

下地が健全ならカバーも有効ですが、下地腐朽や長期居住前提なら葺き替えが推奨されます。

工事中は在宅できますか?

可能ですが、騒音・振動があるため在宅ワークには不向きです。重要工程時の立会いは推奨。

石綿スレートの処分費用は?

特別産業廃棄物として1㎡あたり1,500〜3,000円の追加が一般的。見積に含まれるか確認必須です。

保証は何年ですか?

施工保証5〜10年、屋根材メーカー保証10〜30年が一般的。範囲と免責を必ず書面確認。

外壁塗装と同時にできる?

可能。足場を共用することで20〜30万円節約になることがあります。

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